常山鞆(常山プロダクション)「人間失格」 初出:別冊土曜漫画 1976年

常山プロダクション:常山孝と陽二の兄弟から成る。孝は1944年7月生、陽二は1948年5月生。広島県福山市鞆町生まれ。孝はさいとう・たかを「台風五郎」などの貸本劇画に夢中になり、漫画家を志す。棚下照生のアシスタントを経て1971年デビュー。陽二は手塚治虫などの系統の作家を好んで育ち、上村一夫の影響を受ける。孝が独立した頃から孝の手伝いで漫画を描き始める。「常山陽二」「常山鞆」などのペンネームを用いるがほぼ全て兄弟の共作である。1973年『土曜漫画』誌連載の「男性哀歌」以降、人間の生きる姿を丹念に描く作品を発表し続ける。数年のブランク期間後、1985年『別冊週刊漫画TIMES』誌「おとこの口紅」で復帰。その異色の内容から読者からの反響を得るが、単行本化は見送られ当時の読者以外には知られぬ存在のまま80年代末に活動休止する。

「おとこの口紅」(マンガ図書館Z ): 「おとこの口紅」
2018年8月末単行本刊行予定(まんだらけ出版部)常山プロ Twitterアカウント:@TsuneyamaPuro

漫画マニアというのは多種多様ですが、薄暗い路地裏に捨てられている湿った怪しげな漫画誌を拾い集めて喜んでいるかのような人々が昭和劇画誌愛好家という人種です。彼らは『ビッグコミック』などのメジャー誌よりも、『土曜漫画』という昭和真っただ中においても古臭かったであろう誌名のような二流誌、三流誌を好む性質があります。その『土曜漫画』で昭和50年(1975年)前後に多数の作品を掲載し、愛好家から注目を集めていたのが「常山陽二」という作家です。プロフィールの通り、この兄弟作家は長らく消息が知られぬ状態でしたが、兄の孝氏が2016年末にTwitterに現れたことにより80年代作品「おとこの口紅」が『マンガ図書館Z』にて無料公開され話題となりました。しかし、常山兄弟の傑作はそれだけではありません。この「人間失格」は私が大きく感銘を受けた作品であり、広く読まれてほしいと願い、電脳マヴォに掲載して頂くこととなりました。『アックス』第124号(青林工藝舎)に常山陽二「みずえの街」(1975年)再録と解説記事が掲載されていますので合わせて読んでいただければと思います。[稲村芳裕 Twitterアカウント: @NAM_1974]
【稲村芳裕】

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