フェルマータとは音楽が終わった後の余韻を示す符号。バンジージャンプのひもが切れて地表に激突したみら子さんが目覚めた場所は、どこにあるのか誰も知らない星・フェルマータでした。エンジョイライフ研究所のニコと名乗る謎のネコ耳少女に「観察」されながら、みら子さんの不思議で奇妙な生活が始まるのです…。

ふかさくえみさんは、東京工芸大学在学中の2005年5月に集英社ジャンプデジタルマンガ大賞で佳作を受賞、同年9月から「ジャンプデジタルマンガ」サイトにて「マルラボライフ」を連載開始しました。「マルラボライフ」はWEB公開を前提に全編がFLASHで作られ、コマが割られてフキダシもあるマンガにも関わらず、音楽や効果音が使われクリックすると時間差でセリフやコマが出たり、コマの中がアニメーションするなど、デジタルマンガの教科書のような作品です。同作は平成18年度文化庁メディア芸術祭マンガ部門の審査委員会推薦作品に選ばれました。

ジャンプデジタルマンガが2006年に終了したことをきっかけに、ふかさくさんは一般的な紙雑誌マンガに進出します。芳文社「まんがホーム」で『ちまさんちの小箱」を連載したり、霜風るみ名義で『おいでよどうぶつの森』のコミカライズに参加しますが、ふかさくマンガの特徴は、紙のマンガもFLASHの描画ツールを使って執筆されていることです。

ふかさく作品は描画からフルデジタルにも関わらず、とても温かい線であり、彼女が描く可愛らしくも不思議な世界は、同人誌界でも根強いファンを生み出しています。

竹熊は、「マヴォ」に掲載するマンガはすべてのネームをチェックしていますが、この『フェルマータライフ』だけは、ネーム確認はおろか打ち合わせすらしていません。彼女はまだ若いですが、完璧な「ふかさくえみの世界」が出来上がっていて、第三者が介入できる余地が何もないからです。私は、この作品に関してだけは一人の読者として、続きを楽しみに待っているだけなのです。(竹熊)

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